ワクチンの花プリムラ

ワクチンの花プリムラの由来

イタリアのワクチン接種キャンペーンのシンボルは、プリムラの花。

(トスカーナの野に群生する野生のプリムラ)

春に咲く花プリムラは、ラテン語でPrimus /最初という言葉から派生してprimula /プリムラと呼ばれる。暗い冬が幕を閉じようとする春の野に、その名の通り最初に蕾を見せる花の一つだからだ。それで、ワクチンがもたらす明るい未来に向けた希望がプリムラに託された。シンプルだが素敵なメッセージである。

それと、アンドレア・ヴェッロッキオ作の「花束を持つの少女」の花束からイメージを得たそうだ。ヴェッロッキオはレオナルド・ダ・ヴィンチの師匠であるが、レオナルドの「ジネヴラ・デ・ベンチの肖像」はヴェッロッキオのこの少女からインスピレーションを得たとも言われており、名の知れた像である。少女の表情といい手の動きといい、とても繊細で美しく私は大好きな作品だ。フィレンツェのバルジェッロ美術館所蔵なので、フィレンツェでぜひ観ていただきたい作品の一つである。ワクチンのプリムラはこの像が元になったと思うと、さらに愛着が湧く。

プリムラをデザインしたのは、建築家ステファノ・ボエリ氏。ミラノの垂直の森の作者と聞くとピンとくる方もいらっしゃると思う。昨年末、このプリムラデザインとともにワクチン接種パビリオンなるものの案も発表された。

プリムラの花が咲く円形パビリオンは、他者との接触をできる限り避けた形の利便性とデザイン性に優れた設計で各都市にプリムラパビリオンの花が咲く、というものであった。

しかし、この案は非常に不評を買った。結局、シンボルとしてのプリムラの花は残り、パビリオンは廃案となった。アイデアの背景はさて置き、この非常にシンプルなプリムラ案を、こんな時に(おそらく)高額を支払ってまで高名な建築家に依頼する必要があったのだろうか?というのが主な原因である。フラワーパワーに頼るのか?!という揶揄や必要なのは花ではない、ワクチンそのものだ!という怒りは最もであった。なんと!昨年からプリムラの花を50ユーロで購入してパビリオン設置資金に当てようキャンペーンなるものも実施されていたらしく、それは今日ようやく最終的に打ち切りとなった。寄付を行った方は1名だったとか・・・。慈愛深きイタリア人にとっても流石にイミフだったのだろう。もちろん寄付金はきちんと返金される予定だ。

このプリムラとパビリオン案の依頼責任者はコロナ対策緊急委員会の前会長だったドメニコ・アルクーリ。彼のコロナ対策は、ワクチン手配の遅さ、不要だったのではと疑問視されるワクチン用特別注射針の指示や、マスク準備不備で高額で購入することとなった医療用マスクは実は規格外だった(しかしそれらは対コロナ医療機関にも配布された!)などと多くの面で疑惑が発覚し3月に首になった。プリムラ作戦もアルクーリの時間も費用も無駄な案の一つに数えられる。裁判にかけられる此奴がどうか重い刑罰を科されますように!

イタリアでは珍しくない無能な政治家のコネにまみれた政策が、この後に及んでもまかり通ろうとしていたのだ。恐ろしい・・・。

このようにイメージが悪くなったプリムラではあるものの、そこに込められた願いのとおり、いち早く明るい未来を運んで欲しいと望むばかりである。

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