サン・ジョヴァンニ洗礼堂の燦めくモザイク

フィレンツェの洗礼堂

フィレンツェの洗礼堂

フィレンツェのドゥオモこと花の聖母マリア大聖堂の正面に位置するサン・ジョヴァンニ洗礼堂。白と緑の幾何学模様の大理石で飾られた洗礼堂の外観は、美しいが簡素である。簡素だが、三位一体を表す3と新生を表す8の数字が強調された建物の装飾までが意味をなす、非常に無駄のない造りとなっている。そして内部は、外から想像できないほどに煌びやかな世界が広がる。特に、天井のモザイクの美しさは素晴らしい。一歩中に入ると、時間という概念がなくなり、存在するのは「永遠」のみである。

キリスト審判

審判を下すキリスト。キリストの下で墓から死者が復活しているのが、コミカルで良い♪
右側の復活した人々は地獄行き〜。起きへんかったらよかった!しもた!って思ってるで。

13世紀に造られた8角錐の形をしたモザイクで飾られた天井画は、「最後の審判」が中心となる。中心というか、聖書の終章となり、「洗礼を通しての人類の救済」を表す。

地獄絵
コッポ・ディ・マルコヴァルドによる地獄絵図(1260−70年頃)

ダンテの地獄のルチフェロも1つの頭に3つの顔を持つ。「我が美しきサン・ジョヴァンニ!」と、洗礼堂を愛したフィレンツェ人のダンテはこの絵からもインンスピレーションを得たのであろう。ちなみに、天国編はラヴェンナのガッラ・プラチディア霊廟から影響を受けたと言われる。

アダムとイヴ
アダムとイブの誕生シーン(上)、ヨセフの夢(下)

キラキラの星と顔のある月と太陽が可愛い。天井の8面のうちの5面が、水平に4段に分かれており、外側から洗礼者ヨハネの物語、キリストの物語、ヨセフの物語、創世記が描かれている。聖人、新約聖書、旧約聖書、黙示録の順で開かれた教科書と成っている。

外側とは、見学者である私たちに距離的にも心理的にも近いということになる。洗礼堂ということもあるし、フィレンツェの守護聖人である洗礼者ヨハネは中世のフィレンツェ人が物語に馴染みやすいということで一番外側。(とはいえ、斬首になるわけだから馴染みやすいかどうかは疑問だが)私はキリスト教徒ではないので、教会の装飾は「とりあえず」聖書の名場面を並べたのかと思っていたが、とりあえずの適当ではなく、ちゃんと考えて配置されていることを知り感心する。

主催壇

祭壇も独特の味がある。ガラスのモザイクに負けず、大理石のモザイクも大変美しい。

洗礼堂床

天井もさることながら、床細工もこれまた手が込んでいる。現在、床の一部は工事中だが、黄道12宮があるのが面白い。サンミニアート・アル・モンテ教会の床にも同じものが描かれている。サン・ミニアート・アル・モンテ教会のものが1207年ということだから、洗礼堂の床もおそらく同じ時期であろうということだ。

バルダッサーレコッサ墓

ドナテッロとミケロッツォの共同製作(1425年頃)のヨハネス23世対立教皇の墓碑。15世紀前半、対立教皇ヨハネス23世の時代には教皇が3人もいたのだからおったまげ〜なのである。なぜこの人のお墓がフィレンツェにあるのかというと、メディチ銀行がヨハネス23世のお抱え銀行となり、それがメディチ家の繁栄のきっかけとなった。メディチとヨハネス23世、メディチとドナテッロとミケロッツォはお友達で繋がっている。石棺が上にあるのは、死後、魂は肉体を離れ軽くなり天に昇る、のだそうだ。教会分裂時代に生きた彼の死に至ってもちょっと苦しそうな顔や、石でできてるとは思えない天幕も素晴らしい。


近年、フィレンツェのドゥオモ関連施設が共通チケットになったおかげで、外観からは想像がつかないが実は素晴らしい洗礼堂にも訪れる人が増え喜ばしいことである。洗礼堂はそれほど混雑していないはずなので、ぜひ足をお運びくださいませ。

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