アイリス咲くイギリス人墓地

フィレンツェのイギリス人墓地

アルノルド・ベックリン作死の島

スイス人画家アルノルド・ベックリンによる「死の島」という絵画は、暗い海に浮かぶ、糸杉が鬱蒼と茂る小さな島へ、小舟が静かに近づいていく情景を描いている。小舟に乗る白衣の人物は、亡霊なのか?それとも冥界へ渡る魂なのか?

イギリス人墓地の道

フィレンツェには、この「死の島」を彷彿とさせる墓地がある。そこは「イギリス人墓地」と呼ばれる場所である。

19世紀、フィレンツェには多くの外国人が移住し、その多くがプロテスタントだめ、彼ら専用の墓地が必要だった。その結果、スイスの改革派プロテスタント教会にこの土地が与えられ、非カトリック信徒用の墓地とした。

ベックリンは1870年代にフィレンツェに滞在しており、彼の幼い娘がここに埋葬されたと伝えられており、この場所が「死の島」の着想となったと考えられている。

イギリス人墓地

ロマン主義時代の墓地らしく、死と自然が共存する静かな一画となっている。そして哀感を帯びた白い墓石が並ぶ道を、美しい青紫色のアイリスが覆うさまは詩的である。

嘆きの墓・イギリス人墓地

息子の死を嘆く母親のすすり泣きが聞こえてきそうである。5月の爽やかな風に揺れるアイリスが彼女の哀しみを慰めているようだ。

イギリス人墓地のウィエッジウッド風墓

まるでウィエッジウッドの壺のような墓碑も、時代を表していてよい。

イギリス人墓地のアンカーの墓

シンプルな墓石もあるが、主を凝らした芸術作品のようなものもあり、墓地というよりは緑に包まれた芸術的庭園のようでもある。静かに眠っている人々の邪魔をしないように、ここに眠る人は船乗りだったのだろうか?などと想像を巡らしながら見て回った。

イギリス人墓地のお墓

アイリスだけでなく薔薇などの様々な花が墓を彩り、美しい楽園のようだ。ここがフィレンツェでも交通の激しい環状道路沿いにあるとは思えないほどの静けさである。

墓地が建設された後にフィレンツェを一周する環状道路が整備されたが、この墓地は破壊されることなく、まるで孤島のように巧みに取り残されたのだ。まさに、死の島の名にふさわしい。

イギリス人墓地の死神

心地よい散歩をしていると、死神がここが死者の場所だということを思い出させてくれる。日常の中の非日常な場所である。5月初旬のアイリスの季節に訪れるのが好ましい。

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