国際女性の日、ミモザとイタリア人女性

国際女性の日、ミモザとイタリア人女性をご紹介

春を待つフィレンツェ

3月8日は国際女性の日で、イタリアでは女性にミモザの花を贈り女性達だけでパーティーするが、はて、実際には何の日?

この日は「女性の政治的自由と平等のために戦う」記念の日。

イタリアでは1946年からミモザが女性の日のシンボルとなった。1946年3月8日は戦後最初の女性の日であり、その2日後から女性が投票権を得た記念すべき年となる。ミモザの発案者はイタリア政界で活躍した最初の女性達リタ・モンタニャーナとテレーザ・マッテイ。テレーザは1946年のイタリア共和国憲法制定議会の全議員556人中、女性21人の1人で、最も若い議員だった。最初はフランスを真似てスミレが提案されたが、手に入りにくい。それならと、リタとテレーザは野生で咲いて皆が手に入れやすいミモザを選んだ。シンプルで安価な花ではあるが、どんな地でも咲く強さがある。強さと女性らしさを表す日に相応しいということだ。

ミモザ

イタリアは伝統的に聖母マリア信仰が厚く、女性には優しい国である。しかし前述の通り女性参政権が認められたのは戦後1946年と、欧米の中ではとても遅い。そして現在、女性政治家の割合は欧州27カ国のうち14位と欧州の平均よりも低い。それでも割合増加率は、ここ数年で目を見張るものがあるそうだが。数年前までゴールデンタイムのテレビのクイズ番組で、意味もなくセクシー水着姿の女の子達が踊りを披露しているのを見て驚いたものだが、最近はそんな光景もなくなりそんなところでも女性の位地は改善されつつあるようだ。

ワイナリーなどでも女性経営者が増えてきた。妻名義の方がもしもの場合、最悪を避けれるということもあるが、そうではなく純粋に女性が情熱を持って仕事をこなしている。

女性がここまで社会進出できるようになるには、大きくて厚い壁があったことだろう。リタとテレーザの他に、壁を乗り越えるのに貢献した戦前生まれのイタリア人女性2人をご紹介したい。

※写真は数年前に女性の日を記念して描かれた「スーパードンナ(女性)」シリーズでフィレンツェのストリートアート。作者は謎で、Le#とサインが残されている。

天文物理学者マルゲリータ・アックは1922年フィレンツェに生まれた。彼女は、キリスト教への信仰が薄れ神智学協会に加入した両親を持つ。神智学とは神が存在し全てを支配するのではなく、神に当たる叡智が宇宙や自然を作るという思想だそうだ。そんな両親の影響を受けて、科学者の彼女は神の存在よりも、世界を科学的に捉え自然そのものを愛していた。非常に共感する思想で、彼女の死後世界観も気に入っている。エピクロスが説いたごとく死後の世界は存在せず、「魂はなくなるが、私を構成していた分子は地上に残り、それが次の物質を形成するのに使われるかも知れない」と語っていた。

彼女が高校を終えた頃は、女性の大学進学は珍しい時代だった。しかし両親が「自分の道を進め」と後押ししてくれ、フィレンツェ大学で物理学を学ぶ。ケフェイド変光星についての卒論を書いたことで、最初にフィレンツェの天文観測所で、その後トリエステの天文観測所で研究を続け、イタリアで女性初の天文観測所所長となった。

とてもチャーミングな女性で、「星のシニョーラ/おばさん」と呼ばれた彼女の「でも足はちゃんと地についているわよ(分別はあるわよ)」という返答に、上の絵のようにウィンクする姿が目に浮かぶ。
生涯の伴侶となった夫の文学者アルド・デ・ローザと最初に出会ったのは、マルゲリータが11歳、アルドが13歳の時、フィレンツェの公園にて。2人は自分達の選択で子供を儲けなかった。この時代に、この判断、ただただカッコいい。

自転車を愛し、彼女の自転車人生についての自伝書も出版されている。科学者だけでなく、いろんな面で生命力に溢れていた。

政治にも強い関心を持ち選挙に立候補した。女性をはじめ、いつも弱い者の立場に立ち戦った。動物の権利も守った。

偉大なる科学者として多くの功績を残した彼女の名前をもつ小惑星8558Hackは、彼女の残してくれた勇気とともに今も輝き続けている。

リタ

神経学者リータ・レヴィ・モンタルチーニは、1986年ノーベル賞生物学医学賞受賞した女性である。1909年トリノにて、技師で数学者の父親と画家の母親の間に生まれた。教育的な環境で育てられたが、父親は女は良い母親になべきという古い考えの持ち主だった。しかし親の反対を押し切り、1930年トリノ大学医学部入学し満点の成績で卒業する。第二次世界大戦が勃発し、ユダヤ系ということで住居を転々とする生活を強いられるが自宅で研究を続けた。戦後、研究のためアメリカに招待され、数々の偉勲を残した。非常に優秀な人物だが、人生は決して容易でなかったはず。103歳で亡くなるが、90歳ぐらいから目と耳に問題が生じた。そこで彼女はこういうのだ。「体はダメになったりと好き勝手にすればいいけど、私は体ではなく、頭脳(知識)です」

彼女も政治に参加し、特に女性の権利の向上に一役買った。

最高にカッコいい女性達である。彼女達の生き様になんと勇気付けられることか。女性の日に彼女達を思い、人間であることを考える。

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