ジャコモ・プッチーニの旅

ツアーで、ジャコモ・プッチーニの旅。

イタリア・オペラ界を代表する作曲家ジャコモ・プッチーニは、トスカーナのルッカで生まれ育ち、ルッカ近郊のトッレ・デル・ラーゴの地で永遠に眠る。
先日、トスカーナのプッチーニの軌跡を巡るツアーへお客様をご案内した。

ジャコモ・プッチーニの旅

マサチュッコリ湖畔にあるトッレ・デル・ラーゴの邸宅は、プッチーニがミラノで成功を収めた後に購入した家で、邸内にある礼拝堂にはプッチーニが眠る。数年前からプッチーニ邸宅博物館として一般公開されている。

室内に一歩入ると、まるで19世紀の玉手箱を開けたような感覚に襲われる。プッチーニの音楽が鳴り響き、当時流行のアールヌーヴォー調にしつらえられた居間には、トスカや蝶々夫人を作曲したピアノ、品の良い調度品、楽譜や思い出の品などが並べられている。

私とオペラの関係は良い演目があればたまに天井座敷に観に行く程度なのだが、そんな私でさえこの家にはいたく感動した。長いあいだ閉じられていた部屋が眠りから覚めたような時空を超える感覚に、博物館というようりは個人のお宅にお邪魔して秘密を垣間見るような好奇心が加わり、そこに心を揺さぶる情緒的なプッチーニの旋律が混じり合い、なんとも言えない感動が生まれるのである。

プッチーニ像

館内は写真禁止なので、邸宅前のプッチーニ像を。

プッチーニ

 

当時のこんな写真を見つけたが、服装は違えどもプッチーニ像のイメージに似てるなぁ。

ジャコモ・プッチーニ

この家はプッチーニの心のオアシスとなったのだが、妻の異常な嫉妬のせいで悲劇のスキャンダルの現場にもなってしまった。タバコ、狩り、スピード、そして女を愛したプッチーニ。色恋沙汰のエピソードは数多く残る。情熱的すぎて今の日本で生きていたら『週間文春』の恰好の的になったに違いない。
しかしこれらの恋愛が音楽の原動力にもなっていた。プッチーニの音楽は『小さい魂の大きな情熱』と言われるように、作品のほとんどが素朴な人々の愛の嫉妬・情熱、そこから生まれた不幸を描いたオペラである。

ルッカ

トッレ・デル・ラーゴから、ルッカの町へ。ルッカはとてもお洒落でお気に入りの町のひとつ。

ルッカのプッチーニ像

昼食を済ませたら、プッチーニの生家博物館へ。

プッチーニのピアノ

ここの一番の目玉は、このピアノだろう。トゥーランドットを作曲したプッチーニの最後のピアノ。

プッチーニの生家

生家と言っても2つの家具を除いて当時のものが残っているというわけではないが、この家で生まれ育ったのである。それを思うと感慨深い。

ルッカの町の窓から

台所であった部屋からの眺め。22歳でミラノへ発つ前までプッチーニはこんな景色を見てたんだなぁ。

額

手書きの楽譜、手紙、公演ポスター、メダルなど資料が展示されている。

衣装

プッチーニ自らが依頼した衣装担当のCerratelli社の衣装も見事である。

プッチーニグッズ

プッチーニグッズもいろいろと・・・。

DVD

三部作のDVDの表紙が面白い。右端のプッチーニって、なんだかフレディー・マーキュリーみたいやん。どれがどの作品のイメージなのかな。ジャンニ・スキッキがやっぱフレディ?
三部作はトッレ・デル・ラーゴで作曲されたが、外套のプレリュードや『私のお父さん』のメロディーは、マサチューッコリ湖の水の流れやさざ波を彷彿とさせる。湖での狩りをする時も紙とペンは欠かさず持っていたという。

ルッカの町

 

ルッカの町を散策する。

 

ルッカのドゥオモ

プッチーニ家は代々、ルッカのドゥオモのオルガン奏者であった。プッチーニも大聖堂音楽監督としてオルガン奏者になる道があったが、18歳で劇場音楽を目指し、女王マルゲリータからの奨学金を得てミラノの音楽学院学生となる。
ルッカの大聖堂は、素晴らしいロマネスクの彫刻が残るファザードをはじめ、なかなかに見応えがある。

イラリアの墓

14-15世紀のルッカの町を支配した僭主パオロ・グイニージの2番目の妻イラリア・デル・カレットの墓碑。ヤコポ・デッラ・クエルチャ作の大理石の美しい作品である。足元の犬が特徴。

ティントレット

ティントレットの『最後の晩餐』もある。縦長のテーブル、母乳を与える女性と、型破りな最後の晩餐が面白い。
プッチーニの旋律は忘れがたき美しさがある。『私の名前はミミ』の雪の結晶のような儚い美しさ、『ある晴れた日に』の馬鹿じゃないかと思うほど純粋な切なさ、『ドレッタの夢』のまるでツバメが空に高く飛んでいくような夢見るメロディー、どれもこれも最高に美しい。それでいて、分かりやすい。プッチーニの音楽がその後、映画音楽に影響を与えたというのがよくわかる。幾つかの曲は、昔、『名画座』で見た映画を思い出させる。
絵画がその作者及び作者の置かれた時代・状況を切り離してみることができないのと同じく、音楽も作曲家の生涯を追いながらかみしめるのもまた面白いものである。

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