アカデミア美術館特別展「14世紀の織物と絵画」

アカデミア美術館特別展 織物展示1

(特別展展示品 カタログから)

アカデミア美術館で「織物と14世紀のフィレンツェの繁栄」という特別展が開催されている。(3月18日まで)

美術館最初の展示室の右手奥に特別展への入り口がある。ちなみに、展示室はいってすぐ左側には通常のルートとなるミケランジェロの通路がある。最初の部屋を一巡して特別展へ入っても、特別展出口はミケランジェロの通路であるのでご安心を。小規模だが興味深い特別展のテーマは、14世紀にフィレンツェで栄えた織物業と絵画の関係について。 織物サンプル

(特別展展示品 カタログから)

14世紀初頭までは羊毛織物がフィレンツェの主要産業のひとつであった。上の写真は、プラートの14世紀の商人フランチェスコ・ダティーニが残した資料で、バルセロナと毛織物の取引をした時の羊毛織物の商品サンプルである。羊毛織物は洋服に仕立ててもその後別の形で再利用されたり虫食いになったりとサンプルでさえ残っているのは珍しく、これは資料として貴重なものだそうだ。

織物の模様

(特別展展示品 カタログから)

14世紀に主要産業は羊毛織物から絹織物へ移る。絹織物の中心地といえば、養蚕業も営んでいたフィレンツェから西へ80キロほど行ったルッカだが、14世紀初頭、ルッカを支配した政治の派閥を嫌い幾人かのルッカ人が絹織物の技術を持ってフィレンツェへ移住したことでフィレンツェでも絹織物産業が更に発達した。

羊毛織物は出来上がった布を染色するが、絹は糸を染める。そのため複雑な模様の生地を織ることができた。織物の色は青と赤が人気があったらしいが、羊毛の場合、青は大青から、赤はアカネから、いずれも地元の植物であり、時とともに色褪せた。一方、絹の場合、青はインディゴから、赤はエンジムシからで、それはそれは発色が美しく色が長持ちした。しかしこれらの原料は輸入に頼らなければならなかっため織物の価格が上がったが、そんなことは差し支えなかった。今も昔も、高ければ高いほど喜ぶ裕福層が存在する。

絹織物の複雑な模様に加え、絹独特の光沢も人々を惹きつけた。織物技術の進んだ中国や中近東から見事な織物が輸入されたことで、フィレンツェの織物商人たちも幾何学や鳥などのオリエンタルで好まれたモチーフを真似した。

マント

(特別展展示品 カタログから)

絹織物は大変高価で、金糸を使用した絹織物の衣装1着を今の金額に換算すると、フィレンツェ中心地に家が一軒購入できるほどであったらしい。あまりにも人々の装いが派手になるので、果ては贅沢禁止令なるものが制定され、六千着もの洋服が違法だと没収されたとか!当時、フィレンツェがどれほど繁栄していたかが伺える。 絵画の中の織物

(アカデミア美術館)

14世紀の絵画といえば宗教画であるが、高貴さを表すために見事な絹織物が絵画の中に登場するようになる 絵画の中の織物2

(アカデミア美術館)

14世紀までの宗教画は遠近法もいい加減で時には退屈に感じることもある。ウフィッツィ美術館でもジョットとルネッサンス絵画の間は早送りという感じで見過ごされることが多い。 ウフィッツィ美術家

(ウフィッツィ美術館)

しかしこの時代の絵画の中のキリストや聖母マリアの衣装、背後の掛け軸などをよく見ると、驚くほど豪華で面白い。 聖母戴冠 (アカデミア美術館)

衣装でも位の高低が表される。

モダンな柄 (アカデミア美術館)

色合い的には単純だが、すごく現代的とも言える柄の衣装を着ていることも。

シモーネマルティーニ

(ウフィッツィ美術館)

シモーネ・マルティーニの「受胎告知」の大天使ガブリエルの衣装も負けてはいない。金色の植物模様はモンゴルの元王朝の典型的な模様だというのには驚くとともに不思議な気がする。

しかし、金糸の模様の絹織物は、当時、タタール織と呼ばれモンゴル発祥。タタール織はシリアやエジプトに広がるが、1291年にキリスト教領土であった(イスラエルの)アッコンがイスラムに占拠され中近東のキリスト教領土が全て失われたことを機に、教皇がシリアとエジプトとの商業を1345年まで禁止した。故にタタール織はモンゴルから運ばれたという背景があるからであろう。
シエナピナコテカ

(シエナ国立美術館)

タータンチェックのベッドカバー。 ドゥッチョボニンセーニャ

(シエナのドゥオモ付属美術館)

これもタータンチェックのベッドカバー。シモーネ・マルティーニと上のベッドカバーの絵いずれもシエナ派の絵画だが、タータンチェックがいつも黄色の地にブルーの線である。(受胎告知のものは色はそうだが、柄が若干異なるのかな?)タータンチェックは部族ごとに色が決められていたそうだが、おそらくシエナ人がこのタータンチェック柄のスコットランド部族と取引があってシエナで見かけた柄ではないか、ということらしい。話がそれたが、こんなところからも当時の様子がわかって面白い。

アデマリ

(アカデミア美術館)

宗教画ではない、衣装箪笥に描かれたプライベートな絵である。15世紀の結婚式の行列の様子を写真代わりに垣間見ることができる。当時のファッションって、特に男性が笑っちゃう。

東方の三博士の礼拝 (ウフィツィ美術館)

15世紀の絹織物商人が依頼した「東方の三博士の礼拝」で、こんな素晴らしい衣装を売ってまっせというアピール。宗教画でありながら宣伝効果もあったという、フィレンツェの商人の商魂のたくましさである。 特別展では14世紀の絹織物の布切れの展示と、絹織物が使用されている絵画が数点展示されています。 アカデミア美術館へ行かれる際は、お時間があれば特別展もちらりとご覧くださいませ。奥には贅沢禁止令のビデオが流れていて、どのような衣装が人々を驚かせ違法だったのかが(犬の模様とか、文字が書かれていたとか)、イラストからわかって面白いです。あくまでお時間があれば、ですが・・・。

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